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今日も明日も 2nd season

第48章 見えない鎖 part ⅩⅥ


声を出した事で、ドアを掴んでいた手が一瞬滑った

僅かに外側にそれが傾いたのに気付いて尚も焦りが募る

だけど、隙間は少しずつ広がっていく

真っ青になって動けなくなっているかずくんが視界に入るけど、もう自分にも余裕がない

怒鳴っても、かずくんは動けないだろう

恐怖に足が震えているのが見なくても分かる

ならばこれ以上開けないようにするしかかずくんを守れない


「あなたの負け、ですよ相葉雅紀さん」

およそ、今の雰囲気に似つかわしくない冷静な声が耳に届く

あ、と思った時には隙間から手が伸ばされた

何か持ってる、と認識する間もなく

バチッと火花が散るような音と、身体に響く鈍い衝撃にドアを掴む手が離れる

「…っ!」

もう一度、同じ音と衝撃が腹を襲い、嫌でも膝が崩れ落ちた


同時にドアが開け放たれる

それが誰か、なんて見なくても充分すぎた


「和也を返して貰います」

無表情で俺を見下ろすかずくんの兄は、靴のまま中に入り

ガタガタと震えるかずくんの腕を容赦なく引っ張った


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