
今日も明日も 2nd season
第34章 愛しい人 *赤+紫×青*
「……」
痛む体を押して、何とか起き上がった
俺の部屋じゃない
だけど知ってる、この部屋
余計なものは何も置いていない、シンプルな空間
『…は、本当洒落てるよなぁ』
ー…何言ってんの
『生活感なくて、…のイメージそのまま』
ー…あなただって、生活感ないじゃん
甦る会話
確かに俺は笑っていた
誰と話してた?
誰と笑ってた?
下に無造作に置かれているバッグの中から、騒がしい着信音が鳴り響く
動く度に腰が痛むけど、鳴りやまないそれが気になって
何とか手を伸ばしてそれを掴んだ
名前を見て、すぐにスワイプする
「翔ちゃん?」
『智くん、今どこにいるの?』
どこか切羽詰まったような、悲痛にも聞こえる声
「…分かんない」
『え?』
「見たことある部屋だけど…分かんない」
何処、と答えようがないから正直に答えた
『あいつ…』
ボソッと呟いた翔ちゃんに、今度は俺が「え?」と聞く番になる
『迎えに行くから』
「え、だってここが分かるの?」
『分かるよ。…だからそこにいて』
プツンと打ち切られた通話
翔ちゃんの声が、やたら耳に残っていた
