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今日も明日も 2nd season

第4章 見えない鎖 Ⅹ



電話を終えて、未だに怯えた目で俺を見つめているかずくんを視界に捉えた

スマホをテーブルに置いて、ソファーに向かう

その行動をも、かずくんは目で追っている


先輩との電話で、多少は冷静を取り戻せた
…今なら優しくなれるはず

かずくんの隣に座り、怯えた瞳に自分のそれを合わせて

「……ごめんね」
やっと俺は、かずくんに謝る事が出来た

かずくんの顔が次第に泣きそうに歪む

「怒鳴ってごめん。怖かったよね」

「……っ」

小さく首を横に振ったかずくんは、俺のシャツをその華奢な手で握ると

「まーくん…悪くない、です」

涙を溜めながら、また首を振った


「ううん。さっきのは俺が悪い。勝手にイライラして八つ当たりしたんだから」

そう。あれは八つ当たりでしかなかった

自分の愚かさをごまかす為の、最低な八つ当たり


「でも…」
「ホントだって。かずくんは何も悪くない」

俺のシャツを握る手に自分のそれを重ねる

「ただね、聞いて」

「…はい」

「明日の夜、ここを離れるよ」

それが何を意味するか
かずくんにはすぐに分かったみたいで


「分かりました」

キュッと唇を噛んで、答えてすぐに俯いてしまった



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