
今日も明日も 2nd season
第4章 見えない鎖 Ⅹ
“背筋が凍る“
生まれて始めてこれを経験した気がする
顔を見た事はないのに、何故か下にいる彼がかずくんのお兄さんだと瞬時に察したのは
やはり兄弟で顔の造形が似ていたからなのか
それとも醸し出す雰囲気に異様さを感じたからか
ただ、蛇に睨まれたカエルの如く
その視線に足が動かなくなってしまったのは確かで
俺は暫く視線を合わせたまま固まってしまった
下にいる彼がふ、と目を反らして階段の方に歩き出す
視線が外れた瞬間に俺も我に返って “ヤバい!“ と慌てて玄関のチェーンを掛けた
…間に合った?
ドアに凭れて、深く息を吐く
「まーくん…?」
いきなり血相を変えて玄関に走り出した俺を不思議に思ったかずくんが、ぺたぺたと玄関まで歩いてくる
来ちゃダメだ
声も、出したらダメ
自分の口に人差し指を当て “黙って!“ とかずくんを制する
俺の様子にびくっと震えたかずくんがこちらに来る途中で足を止めた
両手で口を抑え、じっと俺を見つめる
俺はと言えば、気配を外に感じさせないようにそっと廊下を戻って
立ち止まるかずくんを抱き締めた
