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原稿用紙でラブレター

第5章 青いハートに御用心



*ピックアップお礼*


「うんめっ!マジでこれ二宮先生が作ったんすか!?」

「あ、えぇ…」

「んふふ、超美味いでしょ?」

「ほんとだ美味い。まぁ俺も作れるけど」


小さいローテーブルに男四人。


そこに所狭しと並べられているのはにのちゃんお手製料理とビール缶。


教育実習の打ち上げと称して集まったにのちゃんの家。


就活中にも関わらず急な誘いにも快く来てくれたのは、きっと松潤も一緒だったからに違いない。


にのちゃんが作ってくれた料理を美味しそうに頬張る翔ちゃんを見ていると、何だか俺まで嬉しくなっちゃって。


チラッと隣のにのちゃんを見れば、照れ臭そうにはにかんでようやく箸を手にした。



***



一頻り食べて飲んで喋って。


テーブルの上にはほとんど無くなった料理と空になった缶が散らばっている。


…そしてなぜか。


酔い潰れたにのちゃんが傍のソファに項垂れるように体を預けていて。


「…ねぇ、なんでにのちゃんに飲ませたの?」

「は?俺じゃねぇし!松潤だろ!」

「いや先生が勝手に飲んだんでしょ。気付いたらチューハイ手に持ってたし」

「ちょ、止めてくださいよ!」

「まぁいいじゃん。本人もジュースみたいって言ってたし」

「そういう問題じゃないんだよなぁ…」


ニヤニヤした松潤を尻目に両手で頭を抱えた。


あの体育祭の打ち上げ以来、絶対飲まないって宣言していたにのちゃん。


もちろん今までも家では飲んでなかったし、付き合いの飲み会でもちゃんと飲まずに帰って来ていたのに。


なんでこうなるかなぁ…


「つーか飲んでまずいことあんの?」

「あるよ。大アリ…」

「んじゃ俺らそろそろ帰りますか」

「は?なんで急に」

「じゃあな相葉、ごちそうさま。あ、お前はこれからいただきますか」

「っ…!ちょっと!」

「俺も帰って翔をいただこうかな」

「うるせぇ!ちょ、ケツ触んなっ!」


翔ちゃんをぐいぐいと玄関へと押しやる松潤の背中に成す術はなく。


パタンとドアが閉まったと同時に、静かな部屋にはにのちゃんの寝息だけがこだまして。

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