
原稿用紙でラブレター
第1章 原稿用紙でラブレター
意気込んではみたものの、どうやって伝えようか。
ベッドに仰向けに転がり両手を枕に天井を見つめる。
二人きりになれるタイミングなんて普通の学校生活じゃなかなかないよな。
昨日と一昨日はたまたまだったんだ。
だけど、そのたまたまがあったから急接近できたわけだし。
てことは…
二人きりになれば意外といけちゃうんじゃね?
偶然じゃなくて意図的に二人きりになれる場面を作ったら、その時の雰囲気と勢いで案外すんなり告れちゃったりして。
…っていやいや、そんな簡単じゃない。
そもそも、告れそうな雰囲気になるかすら分からないのに。
やっとの思いでにのちゃんの固いガードが少し崩れたんだ。
変なコトになったらそれこそ二度と口を聞いてもらえそうにない。
はぁとため息を吐いてコロンと横向きになると、床に置いていた通学カバンから教科書が飛び出して散らかっているのが目に入った。
…あ、さっき投げた時出ちゃったんだ。
片付けようと体を起こした時に、ハッとした。
そうか…
これだっ!
ベッドから飛び降りると、カバンを漁って目的のものを素早く取り机に向かう。
少し皺になった端っこを手で伸ばし、シャーペンを握ってふぅっと深く息を吐いて。
にのちゃんに想いを伝えるなら、手紙にしよう。
雰囲気とか勢いとかそういうんじゃなくて。
この…
今の俺の、にのちゃんへの真っ直ぐな気持ちをここに吐き出してみよう。
手紙なんて一度も書いたことないけど。
それに便箋なんて持ってないから、課題用の原稿用紙だけど。
それでもいいや。
下手くそなりに、まんまぶつかってみよう。
ぐっと息を飲み込んで一行目にペン先を付けた時、ベッドに投げ出してあったスマホの着信音が響いた。
その機械的な音に入り過ぎていた肩の力が抜ける。
立ち上がって手に取れば、画面には翔ちゃんからのメッセージ受信の知らせが。
"おっす。家いる?電話していい?"
と短く書かれたメッセージ。
電話なんて珍しいな、なんて思いながらそのままアプリの通話ボタンをタップした。
