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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~

第26章 運命は・・・先着順?

『ゆぅちゃん・・・どうして
そんな・・・笑ってるのよぉ』



マリアが目を潤ませた


あー?うっせぇぞマリア…
俺がオドオドしてたら

お前余計にためらって
この場を去れねぇだろ?

男ってのはな
そういうモンなんだよ



『ふふっ・・・俺はしぶとくて

頑丈だから心配すんな、ってこと?

わかったら早く・・・』





『いや・・・ゆぅちゃぁん・・・グスっ』





泣き出すマリアを
俺は強引に突き放して
背を押した





『マリアっ!行け!…早くっ』




追ってくる連中を警戒しながら
マリアに向けて叫んだ




『っ…止まれっ!このクソハゲ!

~~マリア!!!逃げろ!!!』









逃げろ・・・?


逃げろ、逃げろ…と
マリアに叫びながらも

その本心ってのは
複雑なモンだった





なんで…俺らが

なんで…マリアが

逃げ回らなきゃなんねぇんだよ?






マリアは・・・犯罪者でもなんでもねぇ





時に・・・こんな時に

俺は、そんな理不尽さや

不条理な現実に

めちゃくちゃに怒りを覚えるんだ





むしろ犯罪者スレスレ…いや

犯罪してんのは…どっちだよ

このクソったれどもが






『っ・・・』



マリアは背を向けて走り出した





「おい!逃がすなっ!!」

「早く車まわせ!」

「このぉ~~石アタマのクソガキぃ!!?」



『っせぇ!!ハゲアタマのクソジジイ!!
帰って寝てやがれっ!』





マリアの元には…行かせない



テカった頭を赤く腫らして
俺を恨みがましそうに見て興奮してる
ハゲが殴りかかってくる

クマみてぇな男は
わりと鈍足そうだ

特に…警戒してるのは
一番すばしっこいサトウってヤツ






マリア…頑張れ




あと少し・・・あと少しだからな?





そこをまっすぐ…向こうまで走れば
確か交番だって見えてくる



『待て…~っ、止まれ!テメェっ』

「離せっ…~~!!何してる追いかけろ!」



必死こいて連中を代わる代わる止めるけどさ
いかんせん3対1・・・つぅか

それ以前に
コイツらやっぱ…腕力がハンパじゃねぇ


まぁ、いい
マリアを逃がせれば…御の字
それが全てだ


あと…少し








キキィ…っ







・・・!?

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