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かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~

第29章 果たされぬ・・・約束

エリカは…しまいには
自分まで泣き出して

泣きじゃくって…俺の方を見ていた



『今のユウトを見たら
この人は…絶対に悲しむよっ…

今のユウトは…この人が
一番なってほしくないユウトだよ!

そうなってほしくないから
この人…一生懸命これ書いたんじゃんか』







『うっ・・・~~っ』








『ユウト・・・』








フワ・・・







『っ・・・!!』






ふにふにした…柔らかい手が

背を向けた俺の頭を

そっと包み込んだ







『ユウトは…大好きな人を
幸せにしようとしただけ

本気で…守ろうとしただけ
それは…相手に伝わってる

ユウトは・・・やさしい
そんなユウトが幸せになんなきゃ

この人が…泣いちゃう
エリカは…そう思うよ』






『っ・・・ぅっ…うっ・・・~~っ』







誰にも打ち明けられなかった想い・・・



聞こえているけど

聞こえないフリをしたアイツの声・・・



届いているけど

受け止められなかったアイツの想い・・・







俺は…あの時から

マリアが…自由をなくしたあの日から

時が止まったように

何も変わっちゃいなかった




前に進むどころか…一歩…1ミリさえ

前を向くことも

顔を上げることさえ出来ていなかった



それこそ、アイツが願ってくれた俺とは

真逆の俺・・・





抱えてきた想いや…罪悪感

その上に更に輪をかける今の俺の

アイツに対する…うしろめたさ




そんな想いが爆発するように

俺は…抱きしめてくれたエリカにもたれて

泣いていた・・・

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