
かごのとり ~ 家出娘の家庭事情 ~
第29章 果たされぬ・・・約束
『ふ~スッキリ♪』
シャワー終えて半端に乾かした髪で
ヤツは出てきた
ギャル風な巻き髪がとけて
ストレートになった少し濡れた髪
化粧落とした顔は
その幼さをうかがわせる
エリカはそのままリュックをもって
さっさと支度した
『そんじゃっ…ありがとでしたっ♪』
『おぅ・・・気をつけてな』
俺はソファに寝転んだまま
マンガ読むのに夢中で
一応は俺に敬意を払って
挨拶してるらしきその姿を
見送りもしなかった
・・・ん
『おい・・・エリカ?…ケータイ』
『えっ?!マジ!?…うわっ』
ソファの前に転がってた
ド派手なスマホを拾って
玄関から飛んで戻ってきた
ソイツに渡す
忘れモンなんかされて
二度と戻って来られたら
たまんねぇからな?!
『わ~…いっけない!セーフセーフ♪』
俺の近くに寄る
乾きかけのストレートヘアが
少し揺れて
俺はその化粧してない幼顔を
初めて近くで見る
『・・・』
え・・・
『ケータイなしじゃ生きてけない!
ヤッベヤッベ~…』
『おい・・・エリカ?ちょっと待て』
『うん?もう忘れ物ないよ♪
ありがと♪お兄さん』
『〃コレ〃・・・どうした?』
俺は…エリカの目を見つつ
自分のオデコを指さして
昨日も、そしてさっきまで
前髪や化粧で隠れてた
その幼顔のオデコや目の上に
うっすらと見える
青いアザを見て
問いかけた
『え・・・?…あぁ、べつに』
『どした?・・・それ』
『・・・ころんだ』
『・・・』
なんでかな・・・俺…
俺の中に
本能にも似た…嫌な感覚(モノ)がよみがえる
胃の奥…一番奥底を
ギュウっと鷲掴みされたみたいな
嫌な感覚・・・が
よみがえる
