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僕は君を連れてゆく

第67章 瞬きの合間に

「あのさ」

「ん?」

雑誌のインタビューを2誌うけて撮影の準備が整うまでの少しの時間。
ウトウトしながら潤の話に耳を傾けていた。

「俺さハリウッドのオーディション受けようと思うんだ」

「へぇー、なんで?」

「自分の力を試そうと思って」

「いいんじゃん?やりたいことやれるうちにやっておかないと」

何も考えずにそう言った。

「ありがとう」

あとから聞けばデビューしてから一年がたった頃から英会話に通っていたらしい。
休みがあれば海外に出掛けているは知っていたけどそこで多くの知り合いを作っているのは知らなかった。
オーディションを受けることは事務所も賛成して海外と日本を行き来しながら潤は仕事をこなしていた。

そして、3ヶ月後に本当に映画の出演権を手に入れてきた。

「すげぇな…」

「端っこの役だけどね」

そうは言ってるが名前のある役だしポスターの撮影に呼ばれているそうだ。
それってかなり重要な役じゃね?

「翔くんにも迷惑かけることもあると思うけどよろしくね」



「へぇー!松潤すごいね!」

俺は雅紀にうっかり潤がオーディションを受けたことを話していた。
今日も俺の家で雅紀は夕食を作ってくれていた。

「まぁ、こっちとあっちと行ったり来たりでさ、こっちの仕事中途半端にしなきゃいいんだけどな」

「松潤なら大丈夫だよ。真面目だもん」

「まぁな…」

「俺たちのラストライブ、12月24日に決まったんだ」

「それって…」

「うん…俺の誕生「イブじゃん!!」」

「えっー!!!そっち?確かにそうだけどさ~」

「嘘だって!!そっかぁ。最高の日になるよ!」

「もう!翔ちゃんってば」

この日のメニューは麻婆豆腐だった。
めちゃくちゃ、辛くて。涙と汗がすごかった。

「一緒に寝るか…」

「えっ!?」

いつもなら俺はベット、雅紀は隣に布団をひいて寝てた。
起きると必ず畳まれていた布団。

決して広くないベットに二人で入る。

「雅紀…」

そっと呼び掛けたら俺の胸元にすり寄ってきた。
その体に腕を回して。
おでこにキスをした。

「翔ちゃん…」

声を殺して泣く雅紀の背中を俺はずっと撫でていた。

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