
僕は君を連れてゆく
第37章 背中合わせ
泣き出した俺と怒鳴り声をあげた潤を見て、
店員から店を出るように言われた。
外の駐車場
「ヤったの?」
「……」
「ヤったのか、って聞いてんだよ!」
今、何を言ったって潤は聞いてくれない。
だから、黙っているしかない。
「黙ってるってことはヤったってことだぞ?」
「……」
潤は俺から一歩ずつ、一歩ずつ、下がっていく。
「お前、人の浮気疑ったくせに…最低だな…」
汚いものを避けるようにして俺から離れていく。
待って、と。
違うの、と。
この腕を伸ばして潤を。
「だって…!待って…行かないで…」
俺はその場に踞った。
「だって…、潤が…」
「俺が悪いのか?俺は浮気なんか、してねぇっ!」
「俺だって…シテない…」
「櫻井の野郎…ぶっ殺すっ!」
「潤…俺たちって何?俺ってなんなの?潤にとって俺って何?」
最後は叫んでた。
愛してるって。
俺のそばにいろって。
抱き締めて欲しかっただけなのに。
潤が駐車場から出ていくのを見てた。
俺が悪いの?
俺が…
だって、潤が…
「潤…」
33歳になった、初めての夜。
言い訳と後悔が俺の背中を登ってきて。
今、どんな言葉を繋いでもきっと潤には伝わらない。
後悔が、俺の肩に重くのし掛かる。
そして、それは枯れることのない涙となって流れていく。
「だって…」
どうしたらいいの…
