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僕は君を連れてゆく

第37章 背中合わせ


目を覚ましたら目の前に潤の背中が見えた。

手を伸ばせば届くのに。

こんなにも遠いなんて。

「ん…」

潤が寝返りを打ちこちらを向いた。

寝顔は昔と変わらない。

なんだか、可愛いまま。

また、泣きそうだ。

「起きよ…」

ベッドから出て鏡に写る自分の顔はとてつもなく、
ブサイク。
さらに、寝癖もひどくて。

「汚い顔…」

顔を洗って、髪の毛を水で濡らして。
このままにしとけば、乾くだろ。

そのまま、キッチンに向かいコーヒーの準備する。

この豆。
潤と二人で見つけて、選んだ豆だ。

カップだって。
潤のカップを手に取り抱き締める。

潤…


「おはよ…」

「あ、おはよ…もう少しでコーヒ入るよ…」

カップを抱き締めるところを見られて。
重た…

「ねぇ、この間さ、後輩の中島。覚えてる?あいつがさ、俺に子供欲しくないんですか?なんて聞いてきてさ…最近、そんなこと聞かれなかったからさ…」

こんなこと言ったって…
しょうがないって分かってる。

言えば言うほど、重たくなるってわかってる。

でも、止められない。

「潤は…どう思ってるの?子供のこと。俺との子供…ほしく…ない…?」

泣いたら、ダメだって…

でも、最後の方はちゃんと聞こえてるかもわからない。

潤は下を向いたまま動かない。

コポコポとコーヒーメーカーの音が部屋に響いて。

「コーヒー飲もうか…」

沈黙に耐えられない。

潤から顔が見えないように。
泣いてるなんて、見られたくない。

フーッと、細く小さく息を吐き出す。


「今日…今日は早く帰れるかも。」

潤が俺の肩に手を置いた。


「……」

「うん。早く終わらせて帰ってくるから。」


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