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Best name ~ 追憶 ~

第1章 私の記憶

そして私は、ソウタさんの元で
働かせてもらえる事になった。



仕事を始める初日のこと。




『アイル~、今日もう一人のスタッフを
紹介するからナァ?』



朝食をとりながら、そう伝えられた。



もう一人の人…


それはそうか……
私は何の資格も持たなければ
ロクなお手伝いも出来ない。



どんな人だろう……?



私の〃事情(コト)〃って……

知ってるのかなぁ……?






心を密かによぎる不安。




〃仕事〃として働くことも初めてな私は
この日、様々な不安に
ひどく緊張していた。



ソウタさんに連れられて
初めて病院側に足を踏み入れた。





『おっス、おはよ~!!!』


『あっ!おはよございま~す!!』





ガタゴトと、カウンターで
何やら準備をしているのは……



女の人…。



大きな…元気な声。
後ろ姿。




あいさつ……しないと。




私は少し忙しそうなその背中に…




『ぉ…おはようございます…っ』





元々そう大きい方ではない声を振り絞って
少し裏返りながら挨拶した。




『きょ…今日から、お世話になります…っ

片瀬……ぁ…藤沢……愛留です…っ』









『フフン♪…知ってるよ❤』







『……えっ?』






くるっ……と、ようやく
こちらを向いてくれた、その女性は…。



かくれんぼしてたとでも言うように
「バァっ」と顔を出した。





『あ~、一応紹介しとくな。
看護師の〃マナミさん〃だ』



『ウィ~~っス♪❤なんつって(笑)』







〃中谷 真波〃さん…。


ソウタさん同様
祖父の代から病院にいてくれたスタッフ。



私の8歳年上のお姉さん…

兄弟のいない私にとっては
私を妹のように可愛がってくれた
やさしいお姉さんだった。


明るくて元気で、しっかり者……


お茶目に振る舞う反面


人情深くて、やさしくてカッコイイ
憧れの、お姉さん。

私の大好きな、お姉さん。


おまけに長身でスタイルが良くて
とびきりの美人……


ぁ……喋らなければ…(笑)


なんて、言われる事も時折の…。





年下の私が言うのもなんだけど
無邪気で素直で
人懐っこくて…本当に可愛い人だった。

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