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Best name ~ 追憶 ~

第2章 私の希望

お礼・・・?



お礼を貰うようなことしていない……むしろ。






そう思いながら
差し出されている袋に手を伸ばす。


婦人服のお店の袋…。




え・・・?




姿を現したのは


昼間にみた
お店のショーケースに飾ってあった
夏物の黒いワンピース。





カワイイ…だけど
ちょっと大人っぽくてキレイな……
なんて、ながめていた。







だけど……どうして彼がこれを……。

いつの間に……。






とっても素敵な
大好きな……オシャレな洋服…

だけど私にはもったいない。



そして元より
彼にそんなことまでしてもらう理由も・・・







断った私に、彼は

〃気にしなくて良い〃と

そしてまた絶妙に私に
〃逃げ道〃を残してくれてから
すぐに去っていった。





あ・・・私

また、お礼も言わずに・・・。













家に帰った私は、改めて
もらった包みを開けた。





黒いワンピース・・・



シワにならないように手早く拡げた。



『深い意味のある物じゃない』

『気にせず好きにしてくれ』


と言って渡してくれた彼……




彼の言っていることは本当に……

言っているだけの意味

言っていること、そのままのような気がした。




『お礼』だ、と。

「プレゼント」とは言わず
実際にラッピングなどは施されず
普通にキレイにつつんであっただけの服。

私が・・・気にしないように

受け取りやすいように
そうしてくれたのではないかなぁ、なんて

私は一人、勝手に思っていた。



接していくうちに
私なりに「彼は」「彼ならば」、と

彼は、そんな人なんじゃないかな・・・

なんて、私の中で
彼の人柄というものが
出来ていた気がしたから。

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