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第22章 償い

金曜の仕事帰り…
秋の雨の後の湿気を含んだ重苦しい外気

オレは着信に残る番号にようやく電話した

住宅街のマンション…
重い足取りで向かい
部屋番号を押す


『~…やぁっと来てくれたぁ
待ってたよっ…~早く入って?』


出迎えた女…耳に貼り付くような声

オレの腕に手をからみつけて引っ張る
…強引な女

ギラギラした長い爪…
鼻にまとわりつくような香水のニオイ

…一時期でもオレ…よく
こんなんが平気だったな…?

自己主張の強いニオイに化粧
そしてその本人…
吐き気がしてきそうだ


『座って~?コーヒーでいい?
あっ…!ワイン冷やしてるけどっ
とりあえず乾杯する?』



…呆れた女

この図々しさが
ある種
今のオレには羨ましいくらいだった


『…レナ…』


『わかってるよ!
もう別れたんでしょ?
ここに来たってことは

…ていうか知ってたよ?
あの子が言いに来たから
ぇと…~元カノさん?』





『え…』

〃…アイルが・・・〃




『ご丁寧にどうも~って感じだけど?
リョウキが戻ってきてくれたし
もう何でもいいけどね~♪』


『…』


『わざわざ…リョウキには
もう二度と会いません~とか
言ってたけど?
敢えて潔くってコト?律儀な子だね~』



相変わらず…一方的に
よく喋る女だ…

ろくにオレの方も見ず
愉しげにワインの詮を開けている


わずらわしい

オレは早速本題に入るが…


『アイツに…言ったこと…』


『~?…なによ
そんなコワイカオしないでよ
べつに…ホントのコト言っただけじゃん?』


『…は…?』

早速噛み合わない話に首を傾げるオレを
急かすかのようにレナがスタスタと
何かを取りに行く


カウンターテーブルに
ドサッと何かを投げ出す




…なにかの切り抜き

そして卒業アルバム?


『?…』

レナの派手な爪の指す所には…


〃…片瀬 愛留…?〃


中学生かそこらの
幼いアイルが微笑んでいた


『コレ…あの子だよ?
世間てセマイよねぇ

地元近いの、あたし
小学校も一緒だった

リョウキの彼女だって
はじめ見た時はビックリしたけどさぁ…

名前変わったみたいだけど?
すぐわかったよ

まぁ下の名前も
チョット変わった名前だし?

…あの子~地元じゃ結構有名だよ~?
・・・色んなイミでね?』

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