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第13章 あたたかい風

『マツイのおばあちゃん…っ』



アイルが思わず笑顔で駆け寄る



『アイちゃんしばらくじゃったねぇ~』


おばあさんが
アイルに手土産を渡しながら話している

その様子をしばらく見守る

アイル…嬉しそうだな



『~にしてもねぇ…人の人生てぇのは長く…
いろ~んなことが、あるけぇね…』


『マツイさん…』



ばぁさん…?何を言い出す?



『アイちゃん、あんたぁ…まだまだ若い
まだまだこの先しんどいことも

そりゃぁなぁ~んぼでも
あるじゃろうて…そんでもな

なんぼ切のぅてもな…負けちゃいけんよ?』




『…ぉば…ぁ…ちゃ…』


アイルが目に涙を滲ませ
思わずおばあさんに抱きついた

おばあさんが、よしよしと
アイルを包みこんで撫でる

つられてオレの目にも
熱いモンががこみ上げてくる


『あんたぁ
ほんに大~勢の人に好かれとる
みんな あんたぁの味方じゃてぇな?

なんも心配せんと、堂々と生きてたらええ
あんたぁ、ほんに優しぃて

頑張りやの良い子じゃ…
かなぁらず 幸せになるけぇな?

安心してぇ、負けんと
つよく生きるんよ?』



『~~~っ…ぅっ…ぅ』




ばぁさん…神だ


おばあさんの神対応にオレは絶句



アイルは涙を拭いながら
おばあさんの言葉にコクリとうなずいた


『ところでぇアイちゃん?あんたぁ~…
最近~良い人でも できたかぇなぁ~?』

『えっ…?なっ…なん…ソレ…っ』


ばぁさん?!再び何をっ!?
アイルが目をパチクリさせている
オレも思わずうろたえた

『ひゃひゃひゃ…そうじゃとおもぅたわい~』

『ぇ、な…んで?そんな…』



『あんたぁ顔見たらわかるモンじゃてぇ
ほんに良い顔しちょる
ええ人なんじゃろねぇ…その様子じゃと~?』


イタズラな顔してアイルをいじるおばあさん

オレは…なんとも気まずくて下を向いていた


ばぁさん、おそるべしだぜ


『う…うんっ…すごく』

『ひゃひゃひゃ!ええこと聞いたけぇ
いつ逝っても、もう満足じゃてぇ~』


『ゃ…やだっ、長生きしてよぉ!もぉ…
いつもそんなこと言って…』

『ひゃひゃひゃ!…~アイちゃん?
誰よりも…幸せになるんじゃよ?』

『…っっ うんっ…』


アイルの仕事復帰のこの日
アイルのまわりは
笑顔と涙
人の温かさに溢れていた

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