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第13章 あたたかい風

『それじゃ…いってくるね』

『あぁ、気をつけて』



『うん』

『…』

アイルを見送るオレ


…ザワザワする


あの日と…同じなんだよ、このパターン


あの日
そのままアイルは帰って来なかった…


…トラウマになってるの
もしかしてオレの方かよ…

アイルは、送りも迎えも断ってくる



『リョウキ?…』

『…』



『ちゃんと帰ってくるから

必ず…帰ってくるから』


『…っ!?』


不意打ちで
チュッとオレにキスすると

アイルは恥ずかしそうに
パタパタと走って出ていってしまった

…してやられたぜ




家に一人でいても
ちっとも落ち着かないオレは
アイルの店へと…足を進めていた



おとーさんかよオレはっ…


敢えて?病院側から入って
ソウタさんに挨拶して
店側の待ち合いのテーブルに行く







中は…とんでもない事になっていた


オレが知る限りでも見たことがない



狭い店内に・・・人・人・人




これは、まさか…






そのまさかだった


昨日の顧客のおかげ?で
アイルの復帰を聞いた人達が
大勢駆け付けているようだった


マナさんが手伝いに入っているほどで
アイルはオレに全く気付いていない


「アイちゃーん久しぶり!待ってたよ~
ホラ!ケーキ買ってきたよ~」

『わぁ、ありがとうございます
ご心配おかけしました
また宜しくお願いします』



「アイちゃん!元気そうだね!よかった!
~ちょっとこの子、耳みてもらえる?
ずっと気にしてるようでさ~」

『あ、…ん~、コレは。うん大丈夫…ちょっと…
はい…もう大丈夫。もしひどくなるようなら
先生に一度…。~今日は料金いらないから』



アイルとの再会を喜ぶ人達の
声が絶え間ない

変わらず
自分らしいスタイルで一生懸命なアイル

仕事してるアイルを見ると時々思う

アイルって…
ちょっと男っぽいかも、って

仕事人間というか
仕事になるとキリッと切り替わって
プロ意識を持ってする

初めの頃も思った記憶があるけど
改めて見るとこういう所は
やっぱり一目置いてしまう

これだけの信頼も納得だ


『あ、コウスケ。抱っこはホラ…こう
お腹気をつけて』

『よぉ、あいる!ひさしぶりだなっ』



ん?なんか…

一部カン高い声に…ピクっとするオレ

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