
Best name
第10章 暗闇の底に
『…殺せばよかった…』
『リョウキ…』
ソウタさんと二人になったオレは
声に出して呟いた。
何故だ?
アイルだけがこんな辛い思いをして…
さらされ
辱しめられて…
これからも
心の傷と闘って生きて行かなければならないのに
あの男は…下手すれば大した罪にも問われず
またのうのうと生きていくことになるのか
と思うと
オレはあの男を…
あのまま殺してしまえばよかったと
この時本気で思っていた。
そうすればアイルは…
少なくともあの男の影に怯えずに済む。
息の根を止めてやりたい。
静まりかえった空気の中で
バタバタと足音が響く。
あの女性刑事だ。
血相を変えて
オレとソウタさんの所へとんでくる。
…アイルが いなくなった。
