
ビタミン剤
第14章 day off
妹が腕の中に抱いてるのは去年産まれた長男の海。
生後9カ月。
ヨーロッパから帰ってくる音楽家の友人が2時から開演するコンサートで演奏を聴いて、その後でお茶をして夜にはディナーの約束をしてるらしい。
「夕方にはお母さん戻って来れるし、夜にはお父さんも帰って来るからお願いっ!」
しっかりドレスアップしてる妹を見ると、兄としてはなんだかなぁって微妙な気持ちになる。
「お兄ちゃん、ニノくん。
わがままで勝手なお願いだってわかってるけど、3年ぶりだしどうしても逢いたいし行きたいの。」
「舞ちゃん、海くんの荷物とかはあるの?」
「あ、リビングにたくさん置いてるけど、
ニノくんほんとにいいの?」
「うんいいよ。でも、海くん泣いたりしたら俺たちだけで大丈夫かな?」
「あ、ぜんぜん平気。」
この子人見知りしない子なのよ、でも眼鏡のおじさんはダメみたいお父さんさんだとワンワン泣いちゃうもんってケラケラ笑いながら言いやがる。
海も本能的に分かってんのかもしれない。
オヤジはどう見ても頑固ジジイで厳めしい顔つきしてるからな。
「ミルクと、離乳食でしょ。あと、着替えと、おもちゃでしょ、それからテーブルの上の育児ノートに
いろいろ書いて置いてるから読んでね。
あ、2人から頂いたチャイルドシートも使わせてもらってまーす」
妹曰く、
海はしっかり飲んでしっかり食べてとにかくやり易い子らしい。おしゃぶりさえあれば寝付きも悪くないの、ほんとに人懐こいしいい子なのよと、親バカ全開の自慢を言ってくる。
「ね、めっちゃかわいいでしょ!
ダンナと将来はジャニーズかなって言ってるの。その時はお兄ちゃん達のコネお願いしちゃうかも。」
妹の戯言に優しく微笑みながらニノが海をあずかって抱っこしながら窓のほうへと向かう。
