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ビタミン剤

第13章 ぼくのペット


玄関の鍵が開く音。
リビングの扉が開き疲れた響きのただいまの声。


「おかえり、潤。ニノと美味い飯食って来た?」


「…うん。ごめんね、翔さん急に飯行くことになって。
あ、部屋掃除してくれたんだ、ありがと。
翔さんはなに食べたの?」


「焼酎と貝の盛り合わせ。」

「はあ?それだけなの。」

「うん、昼飯遅い時間だったし
そんなに腹減ってなかったしさ。」

「じゃあ俺、夜食に雑炊でも作るよ。」


ちらっと俺の膝の上を確認してからキッチンへと向かった潤がいる。必要以上に意識してるところがバレバレなんだよね。



「翔さん、これ?
もしかして…あの店の?」


そうだよ、気がついてくれた。

潤のお気に入りの店のカニクリームコロッケ。 潤の為にわざわざ買いに行ったやつ。


「ああ、今晩潤と一緒に食べようと思って買ってきたんだ。サラダも有るし、また明日にでも食べよ。」



潤がキッチンから走ってくる。

ワンコロを抱き上げて、優しくゲージの中のベッドに寝かせてやってから俺にぎゅっと抱き付いてきた。

「翔さん、ありがと。
ごめんなさい、せっかく一緒食べようって考えて買ってきてくれたのに。自分勝手な事して遅くなったりして。」


「謝らなくてもいいよ。
潤にも付き合いがあるし、俺だって遅くなる時もあるんだしさ。また、明日にでも2人で食べればいいし。」


きつく抱きしめてくる潤の両腕。
背中をトントンと優しく叩いてあげながら俺もつよく抱きしめてやる。


泣いてる?
肩を震わせながら俺の胸に顔をうずめて静かに涙をこぼしてる潤がいた。


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