
ビタミン剤
第7章 人魚のナミダ
翔さんが選んだ道は
アイドルとしては
決して楽ではない先駆者の挑戦。
耳とへそのピアスを外して
落ち着いたネクタイとスーツを
着こなすキャスター櫻井翔は
俺にはとんでもなく遠いところに
離れてしまったかに思えてた。
ガキだね、マジでバカなガキ。
単に嫉妬してたんだ。
自然体で大人になって駆け抜けてく
翔さんに勝手に置いてかれたみたいに感じて
松本潤
おまえはどうしようない馬鹿だ。
「俺、馬鹿野朗過ぎだ。
単に独り占めしたかったんだ
俺だけのものに。」
「翔…さん。翔さんっ。」
酒を呑んでしまってるから
タクシーを呼んで、
翔さんのマンションへ向かう。
車が走り出すと、窓が雨粒で
濡れはじめてきた。
少し手前で降りてから雨の中を歩きだす。
握りしめた携帯を鳴らすべきかどうかを
考えていたら
雨足がかなり強くなってきた。
とっくに0時はまわってて
翔さんが寝てるのか、
部屋にいるのかもわからない。
翔さんの部屋まで行きたくてもいけない。
マンションを見上げてみても
最上階の部屋の灯りなんて確認できる
はずもなくてただ立ち尽くすだけ。
雨はいつの間か土砂降りになってた。
