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キラキラ

第27章 かげろう ~バースト6~


☆おまけのふまけん☆


kento


海が見たい、とリクエストして、風磨と電車に揺られて訪れたそこは、シーズンにはまだちょっと早いから人もまばらであった。

太陽の光を受け、キラキラ輝く海を見渡して大きく深呼吸する。


「潮の香りがする……」


いつもコンクリートでできた街で、生活しているから、少なからず開放的な気分になる。


ふと、傍らの風磨が、タバコをくわえたのをみて、自分も、と催促したら、ん、といつもと違うパッケージを差し出されて、目をみはった。

いつも風磨が好んで吸ってたのは、あまりタバコ臭くないバニラのフレーバーの銘柄。

だけど、これは…えらく女性的なもので、どちらかといえば甘さが際だつフルーティーなもの。

風磨…こんなん嫌いじゃなかった?



「…かえたの?」

「おまえ、こんなん吸ってたろ?」

「…うん。…まあ」

「どんな感じなのかな、と思ってな」



そういって、愛用のライターに顔を近づけるから、俺も火をもらうために、顔を寄せた。


どんな感じなのかなって?

……なんで?


すう……と息を吸い込み、ゆっくり煙を吐く風磨を、ちらりと見上げる。
すると、彼はその涼しい目元に優しさを浮かべ俺を見つめていた。


「……どうしたの」

「ん?」

「なんか……変だよ」

「そーか?」


緩く笑む風磨に、たちまち不安になった。



いつもと違うことしないでよ……



いつもの風磨なら、

「あ?別に」

って、そっけなく返ってくるところだ。


「……」


こないだみたいなことがあってから、こんな優しさですら、今の俺にはまだ不安。

俺は、ここが外であることはどうでもよくなり、タバコを投げ捨てると、風磨の腕にしがみついた。


「……健人?」

「やだ……もうやだ……」

「おい……」

「お願い……どこにもいかないで」

「健人」



あんな思い、もうしたくない。

触れてもこなくなって。
わけもわからず避けられて。

不安で押し潰されそうになった日々。


俺は、ぎゅうっと風磨の肩に顔をおしつけて、温もりを求めるように体を寄せた。

風磨の汗の匂いにまじって、いつも彼が好んでつけてる香りがして。
香りも温もりも何もかも自分に取り込みたくて。

泣きたくなるほどこの人が好きだ、と思い知らされる。



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