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キラキラ

第27章 かげろう ~バースト6~


大学の学祭は、秋というイメージがあるが、なかには風磨さんの大学のように、春に行われる学校も少なくないという。

新入生同士の親睦をはかったりするのが目的だとか。

学校全体も、なんだか初々しい雰囲気に包まれていて、模擬店の学生の照れたような掛け声が、微笑ましい。

サークルや同好会の出し物なども充実していて、俺たちは、途中で買ったたこ焼きなんかをつまみながら、案内板を頼りに、キャンパス内を歩いた。


「風磨、どこにいるっつってた?」

翔さんが、たこ焼きをポイと口に入れて中島さんを振り返ったら、中島さんは決まり悪げに笑って、首を振った。


「…俺が来ること言ってない」

「……マジ?」

「だって。学祭があることも教えてくれなかったのに。…じゃあ、俺に来てほしくないんじゃないかなって思ったら、聞けなかった」


うつむきがちに、そういう中島さんの姿を見ながら、なんとなく似た事件、自分も経験したなぁ、と思いだし、傍らの相葉くんをチラリと見上げた。

相葉くんも同じことを考えていたのだろう。

苦笑いして肩をすくめる仕草に、ぷっと吹き出しそうになるのをこらえた。

そうして、たこ焼きをもぐもぐしながら、過去に思いを馳せる。


去年の夏休みだったな。
相葉くんと想いが通じあえたきっかけの出来事。

……あのときは、公開告白を見られたくないから、練習試合を俺にだけ教えてくれなかった、というオチだったよね。(第21章ひぐらし参照)


俺は、ゴクンと咀嚼したタコを飲み込んだ。
そうして、自分の発想にドキドキする。

……その理屈が、もし今回もあてはまるなら。

風磨さんは、何か理由があって、中島さんに声をかけなかっただけで。

ほんとは多分……好き。


「…だといいんだけどなぁ」

ポツリと小さくつぶやいたら、相葉くんが、なあに?とこちらを見るから、何でもないよ、と笑った。


「……あれ。潤は?」


唐突に呟いた翔さんが、まわりを見渡す。


「え?」



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