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キラキラ

第35章 屋烏之愛


今まで気にしたことはなかったけど、中庭の奥まった場所は、意外と人が来ない。

ここを通り抜けた場所は、特別教室が入った校舎であることも理由のひとつだ。
普段なら誰かれが行き交う場所なのだろうが、今日のような行事のある日に、そんな校舎は施錠してあるから、通り抜ける生徒もいない。

いや、そのまえに、今は昼休みだから、生徒の大半は教室で飯を食べてるはずで。


「そんな怒った顔をしないでよ」


那須がふふっと笑った。


怒るだろうがよ……普通は。


俺は、悪びれもしない那須を、じろりと睨み付ける。
あのとき、好奇心に負けて庭の奥まで足を踏み入れてしまったことを後悔した。

なんだか、事情はよくわからないけれど、俺の両腕は、さっきから知らない奴に後ろ手に拘束されたままだ。
逃げねーよって言っても信じてもらえない。

体育大会を、親兄弟や、外部の人間も見てもらえるように、門扉を開け放してるのだろうけれど、こうなると、セキュリティー問題に発展するんじゃねぇの?って思う。

いや……ただの学生の喧嘩ならそんな問題にはならねぇか。

……櫻井はほんとに一人で来るのだろうか。

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