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キラキラ

第35章 屋烏之愛


長い指が、俺の首の傷を撫でた。
さっきの氷のような表情とは、全然違う優しい瞳で、松本は言う。


「……バカだな。傷つけることないのに……」


キスマークの上に、俺がつけた引っ掻き傷は、さっきからヒリヒリと痛む。
でも、痕跡を見た瞬間、そうせずにはいられなかったんだ。


「……嫌だったから……」


小さく呟くと、隣に座った松本が、俺の肩をそっと抱き寄せた。


「……俺も嫌だ。でも、カズが痛いのはもっと嫌だ」


そういって肩を擦られる。
俺は、松本の胸によりかかり、うつむいた。
その体温や香りに、どうしようもなく居心地の良さを感じる自分がいる。


温かい人なんだよなぁ……この人。


見た目派手だし、口は悪いけど、誰よりも真剣に物事に向き合ってる。
こと、俺に関しては、ちょっと異常なほどだけど。


ふと、肩を擦る手がとまり、その手が俺の頭にのった。
そのまま優しくポンポンと叩かれ……なんだか、恋人同士の甘い雰囲気にかわってゆく。


……いや。いやいや。
ここ学校よ。


二人きりのときに、たまに頬にキスする松本。
でも、学校ではそんなことされたことない。

でも……でも、これは。

一人悶々としてると、突如顎をあげられ。

「……?!」

パニックになるより先に、俺の唇を柔らかいものが掠めた。

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