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キラキラ

第33章 🌟🌟🌟🌟🌟


紅茶の入れ方を知らなかったショウリに、俺は一から教えてやった。

沸騰した湯を用意させながら、手早くティーポットに茶葉を入れる。



「……紅茶は初めてです」

「国賓のなかには、コーヒーより紅茶をお好みの方々がいるかもしれないから、覚えておいた方がいい」


淡々と説明する俺に、


「……そうですね。ありがとうございます!カズナリさまは物知りですね!」


キラキラとした純粋な目で、ほめちぎるショウリ。
俺はもはや苦笑いしかできなかった。


ティーポットをあたためたり、茶葉を蒸らす時間にこだわったり。
ほんの一手間で、味がすごくかわる、ということを説明しながら、手を動かすのは……久しぶりで楽しかった。

思えば、この国にきてから、こういうことをしてなかったことに気づく。

お世話をする側から、される側。

立場が変わるだけで、こんなに居心地が悪いのかと、暗い気持ちになった。



「わあ、すごくいい香りがします!」

「うん……」




清々しく立ち上る芳香に、重苦しい心が軽くなる。
カップに口をつけると、なんだか懐かしい味に、目頭が熱くなりかけた。
ショウリが驚いたような声をあげた。


「おいしい……!」



そうだろ。



「……うまいな」


頷いて、ぽつりと呟いた。



おいしいけど……あっつい!!


サトコさまは猫舌だから、きっと笑って、こんな風に文句をいうだろう。



ソファに身を沈め、窓から青い空を見上げた。


大の国に、なかなか帰れないこの状況。

それは。

……俺が、この…ニノ国の、第一王子だという事実にあった。

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