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修練の鏡と精霊の大地

第17章 村

「みなさん、私は……私は……」


 地面にうつぶせになりながら、ペタロは顔を上げ、必死に揺れに耐えていた。


 怪物はまるで、地面に飲み込まれるように、次々と地割れに落ちていく。


 亀裂が徐々に広がる。


 球也、奈美、純化、淀屋橋は身を寄せあいながら、激しい揺れに耐えていた。


「ちょっと怖い怖い怖い!! こんな激しい地震、怖いって!!」


 球也は全身に伝わる揺れに、これ以上にない恐怖を感じた。


「みんな、大丈夫じゃっ!! 絶対に死ぬことはない。死ぬことはない!!」


 淀屋橋は力強く言った。


 ペタロはたたみ一畳分のスペースに、しがみつき、揺れをこらえている。


 だが、なんとか体を起こし、両手を地につけ、土下座のように座り込んだ。


「みなさん、申し訳ございません! 私では……私だけでは、理想の世界は作れません……抑える世界が巨大すぎます……もし、本当の闇の者がその姿を現したら……その時は……」


 そう言うと、ペタロは立ち上がった。


「私が出来ること!! それは……闇に負けず、意識あるうちに闇にせめること!!」


 大きく横に揺れる地に両足をつけ、生まれたての子馬のように、ゆっくりと立ち上がる。


「なにをするんだ、ペタロさーん!!」


 球也が薄目を開けながら様子をうかがう。


「やめろ!! やめるんじゃっ!! 怪物どもはお主を襲わなかった。わかっておったんじゃよ、お主の本質を……」


 淀屋橋がそう言うも、ペタロは泣きじゃくり、地割れの底を覗きこむ。


 その目に写ったのは、邪悪にうごめく黒い霧だった。



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