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なぜ?

第12章 秘密2

「別れた恋人に口封じのために殺されかけたなんて、言えなかったっ!!」
俺をまっすぐに見る名津子の目から、大粒の涙が溢れた。

「……どういうこと?」
「…」
「なあ、もういいだろ?ちゃんと話せよ。」

それから名津子はポツポツと話し出した。
初めてできた恋人のこと。自分は大好きだったが、相手はただの遊びだったこと。
妊娠し、捨てられたこと。シングルマザーになろうとしたこと。
妊娠6ヶ月の時、子供の父親に車ではねられたこと。病院で流産の宣告をされたこと。テレビで恋人だったオトコの婚約会見を見たこと。

「お医者さんに言われたの。今後、子供はできても育たないって。ジュノさん、子供ほしいでしょ?私では産めるかわからない。そんなこと知られたら、捨てられるって思ったの。ごめんなさい。」
「子供は確かにほしいけど、別にいなくてもいいって思ってる。名津子は?俺と二人だけじゃあ、ダメなのか?」
「ううん。ジュノさんがいてくれればそれでいい。」

「おいで。」
腕を広げてやると、名津子はゆっくり胸に入り込み、抱きついてきた。

「名津子、そいつのことまだ好きなのか?」
「ううん。でも憎んでるわけでもない。かわいそうな人だなとは思う。」
「警察に言わなかったのか?」
「うん。言えなかった。言われた通り堕ろしてれば、轢き逃げなんかしなくて済んだのにって思ったら、言えなかった。それに、一番の被害者は子供だし…私のところに来なければ、産まれてこれたでしょ?」

お人好しにもほどがある。オトコは名津子が思うほどオマエのことを思ってなかったぞ。恐らく保身の塊だ。

「そいつ、今、どうしてんの?」
「ん?何年か前に汚職で捕まった。今は知らない。」
「そうか……」

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