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果てない空の向こう側【ARS】

第10章 ワンダフル・ワールド(潤)

潤「おはよ。」

朝、俺が台所に入って行くと、母さんと智兄が目を丸くした。

母「おはよ…って、潤が起こされる前に起きてくるなんて、どうしたの。それに、何、その格好。」

俺は、白いドレスシャツにネクタイを締めていた。

ネクタイには、もちろん翔兄からもらったタイピン。

智「わかった、原宿ではなんちゃってサラリーマンとかが流行ってんだろ?」

潤「違うよ。俺は今日からスタイリストだからね。気合い入れてんだよ。」

俺はコーヒーメーカーに豆と水をセットした。

母「お味噌汁は?」

潤「ありがと。」

俺は、母さんから味噌汁を受け取ると、炊飯器からご飯をよそった。

智兄が焼いてくれた玉子焼きは、あっさりとした出汁の味とふんわりとした焼き加減で美味い。

味噌汁の具は油揚げと人参と大根。

潤「緑黄色野菜の人参は油揚げみたいな油と一緒に摂取すると、カロテンの吸収がよくなるんだよね。」

母さんと智兄が、口をあんぐり開けてこちらを見ている。

智「おまえ、どうかした?」

母「熱あるの?」

潤「何だよ、普通だよ。」

俺は朝食を完食すると、食後のコーヒーをマグカップに注いだ。

潤「あー、やっぱりベトナムコーヒーは美味いね。砂糖や練乳入れて甘くするのが、ベトナムなんだよね。」

母さんと智兄は、なぜか抱き合って台所の隅で震えていた。

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