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果てない空の向こう側【ARS】

第9章 ベトナムの空の下へ(翔)

潤「そんな、簡単に言わないでよ!」

翔「お前のサロンの前で待ってる間、外から見てたんだ。確かにお前はまだシャンプーボーイかもしれないけど、店から出て来る客はみんな笑顔で…。」

水割りをひとくち含んだ。

翔「お前、チームの一員として、ちゃんとやれてんじゃねぇか。俺、ちょっと感動したぞ。」

潤「翔兄…。」

翔「わがままで泣き虫で気分屋でイキってたお前が、いつの間にか大人になってて…。」

潤「しょおにい…!」

潤が俺の首にくらいついてきて、ふたりで床に倒れ込んだ。

翔「ぐわっ、な、何すんだよ!」

潤は、俺の首筋に顔を埋めて泣くばかりで。

俺は、あきらめて潤の肩をトントンと叩いた。

懐かしいな。

子供の頃、友達にいじめられたとか言っては、俺に泣きついて来た。

そのたびに、俺はこうやって潤をなだめてやった。

もう、すっかり俺よりでかい図体になってしまったけれど。

潤は、やはり潤で。

あたたかいな。

泣くと、こんなに熱量を発するのかな。

そんなことを思いながら、大人になった潤のにおいを感じながら、いつの間にかふたり眠りについていた。

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