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短編集2

第3章 万華鏡

握られた手を見ながら一輝の瞳が切なげに揺れた。





「.......どんなことにも気づく僕を、深夜くんは気持ち悪いっていったよね。」








"キモいんだよ!!!"







あの日、必死に伸ばしてきたこいつの手を振り払った自分を思い出して殴りたくなる。





「.........っ!」





「本当、自分でもそう思う気持ち悪いって。でもどんな変化も気づく。目が自然と深夜くんを追うんだ。見つけたら嬉しくって、いないと寂しくってヘコんで、いつもそんな感じ。」




小さく細い声で綴られる一輝の思いを俺はひたすら手を握って邪魔することなく聞き続けた。






「深夜くんには昔っから迷惑かけてばっかだね。僕のせいで友達とも遊べなくて、地味で冴えなくて鈍くて、深夜くんにとって隣にいたら恥ずかしい存在で。嫌われるのは仕方ないけどやっぱり辛いなぁ.....」





あの時のことを思い出しているのだろうか。一輝の大きな目からボロボロと涙がこぼれる。




「自立したくて、深夜くんに好かれたくて家出したのにっ......何もできなくてっ」

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