
神様の願い事
第2章 秘密
そのゾクッとするようなアダルトな声で、俺の理性は一気に吹っ飛ぶ。
なんの前触れも無く、智くんは急にこんな事しないんだ。
何か魂胆があるのだろうとは思っていても、今はそんなの考える余裕も無い。
智「ん、翔く...」
そんな事を考える時間すら勿体ない。
今は只、智くんの甘い感覚を味わいたいんだ。
パタン...
いつの間にか、俺は反転して智くんの上に乗っていた。
智くんに覆い被さって、夢中で智くんの唇を貪っていたんだ。
智「ん、ふ...、も、大丈夫...」
翔「あ...」
夢中で貪る後ろから、パタンとドアの閉める音が聞こえた。
すると、智くんは俺の額に手を当て、俺の行為を止めたんだ。
智「ふふ、ごめんね。驚いた?」
翔「そりゃ...」
ゆっくりと起き上がる智くんに押されて、俺も起き上がった。
何が起きたのかわからずに放心する俺に、智くんは恥ずかしそうに笑いかける。
翔「今のは、どういう...?」
智「あの人さ、あんなのだけど話してみると結構ちゃんとしてるところもあるんだよ」
翔「どこが」
呑み屋で智くんを追い詰め、今だって覗き見してた。
そんな奴のどこがちゃんとしてるんだ。
智「恋人がいる人には興味無いらしいよ?」
翔「へ」
智「あれなら、恋人同士に見えたんじゃないかな」
翔「だからキスを...?」
あの編集長は意外にもマジメで、人様のモノは取らないんだと智くんは言う。
翔「あんなところ見られて大丈夫なの?」
智「口癖あるんだよ」
ゴシップ誌ではないが、一応雑誌社の編集長だし。
自分の社が扱わないとしても横の繋がりなんて腐るほどあるだろう。
智「”人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ”ってね」
酔っぱらうと言い出すんだと、智くんは笑う。
智「そういうのは嫌いなんだって。あの人翔くんの事も気に入ってるから、俺と翔くんならそっとしておいてくれると思うよ?」
翔「そうなんだ...」
智「うん。あ、でも」
笑っていたのに、急に眉を下げて。
智「了解も貰わずあんな事してごめん」
翔「え?」
申し訳なさそうに俺をチラッと見るんだ。
智「翔くんだって好きな人くらいいるのに...」
俯いて、俺と目を合わせてくれない。
その目は、何故逸らしたの?
