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《sideＮ》



神妙な面持ちで楽屋に入った潤くんは、心配そうな顔をする大野さんに声をかけられた。

なるほどな。
困ってる感じを醸し出して同情心を誘き出すのか。


智「どうした？」

潤「実はさ、ちょっと困ってて」

智「ん？」

潤「ドラマでキスシーンがあるんだけど、上手く出来る自信が無くて...」


ほおお、そう来たか。
後ろの相葉さんも、“さすが松潤”と唸っている。


潤「ちょっと相手してくれない？」

智「へ？」

潤「練習、させてよ…」


ううわ。近いわ。もう既に近い。
“練習させてよ”なんて言いながら、座る大野さんの前に立ちはだかっているし、なんなら大野さんだって少し後ろにのめって倒れそうになってる。


和「ったく。あれじゃ強引すぎるよ...」


大野さんだってあれじゃビビるだろうと、溜息混じりに後ろの相葉さんに目配せをしようと振り返った。


翔「こんなとこで何やってんの？」

和「あ」


すると、その相葉さんの後ろから顔を出す翔さんと目が合った。


雅「しょっ、翔ちゃんっ」

翔「おう、おはよ。つか、楽屋入んないの？」

和「あ～...、いや、うん入るけど...」


しまった。モタモタしてたから、翔さんと早々に鉢合わせだ。


翔「？ 俺入るよ？」

雅「あっ、しょ、翔ちゃんっ」

翔「え？ なに？」

和「や、そのぉ～」

翔「なに？何があんの」


怪訝そうな顔をする翔さんは楽屋のドアに手をかけた。
そして少し開いて、足を止めた。


翔「え...」


いや、止めたんじゃないな。止まったんだ。
楽屋の中の光景に、足が竦んだんだ。


雅「あ～あ...」


目を見開く翔さんを見て、相葉さんは頭を抱えた。

その翔さんがあまりに動かないから顔を覗き込んだら、瞳孔が尋常じゃないくらいに開ききっていたんだ。


雅「しょおちゃ～ん、大丈夫...？」


大丈夫とは程遠い顔付きをしていた。

何故なら、翔さんの見ている光景があまりにショックだったからだ。

という事は、潤くんのチャレンジは成功したのかもしれない。


雅「しょおちゃんてば～...」



タイミングは最悪だけどな。