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神様の願い事

第4章 誤解



翔「ふふ、立場が逆じゃね?(笑)」

「うん...」


抱き寄せた神様は暴れる事も無く、大人しく俺の胸に納まった。


翔「あ、そうだ。次会ったら一緒に呑もうと思って用意しといたんだよ。呑む?」

「え?」

翔「ほら、あの酒」


腕の中で頭だけをくるっと向けて漸く俺の顔を見た。
そんなきょとんとする神様を抱いたまま、俺はリビングへと移動する。


翔「これこれ、好きでしょ?」

「あ」


ソファーに置いた神様はちょこんと座って俺が戻って来るのを待ってた。
その前に、俺の掌を差し出す。


翔「お皿よりコッチでしょ? どうぞ」

「...ふふっ、ありがと」


やっと笑った。
少しクスッと笑った神様は、俺の掌に入った酒をペロペロと舐める。


翔「どう?」

「ん、最高」

翔「ははっ、やっぱり(笑)」


なんだか知らないが良かった。
神様も機嫌良く酒を飲み始めたし。


翔「うん。旨い」


そんな愛くるしい姿を見てると、いつも美味い酒がもっと美味く感じる。


「極上のお酒だね」

翔「そうそれ!」


どうやら神様と俺の舌は合ってる。
あの人とも味覚は似てるから、智くんに呑ませたらなんて言うだろう。

神様のように、美味そうに呑んでくれるだろうか。


翔「ふふっ、く、擽ったいよ」

「おかわり」


ぼーっとそんな事を考えてたら、俺の掌は空っぽで。
神様は、催促するように俺の手をペロペロと舐める。


「はやく」

翔「もう、また酔っちゃうでしょ(笑)」


グズグズと酒の用意をする俺を待ちきれないのか、膝に乗って顔を舐めてくるし。


翔「前が見えないよ(笑)」

「ん? ふふっ」


俺の言葉に反応して、少し首を傾げて俺を覗き込む。
それで目が合うと、ふふっと軽く笑うんだ。


翔「なんか、似てるな...」

「ん?」


ほら、そのきょとんとした姿。


どこかあの人に似てる。



そんな気がした。







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