今日も明日も
第70章 見えない鎖 Ⅷ
かずくんの心に追った傷の深さも、心を壊して耐えていた時間も
本人から聞いていたのに
「ごめん、かずくん…ごめん」
自分の馬鹿さ加減が情けない
かずくんの顔をまともに見られないけど、まずは上から離れようと膝を立てようとして
「まーく…っ」
ふいにシャツの脇を小さく引っ張られた
かずくんが、震える手でそこを掴んでいる
涙でぐしゃぐしゃの顔で
怖がってるくせに俺のシャツを掴むとか
それじゃ益々自分が情けなくなるじゃんか
「…怖がらせてごめん。離して」
とにかく離れなきゃ
頭、冷やしたい
「嫌です…っ」
「かずくん……?」
「離したら…、まーくんいなくなる…!」
かずくんの予想外の言葉に思わず固まってしまった
「…いなくならないよ」
本当なら、優しく笑い掛けて伝えたいのに
その声は自分でも苦し気で
真っ直ぐに見上げるかずくんから視線を逸らすしか出来なくて
こんなんでかずくんが安心するわけないのに
にゃん太も、ご主人の様子に何か感じ取ってるのか
俺の踵をその小さな爪で引っ掻いている
それはまるでにゃん太にも責められてるみたいでいたたまれなくなった
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