今日も明日も
第60章 見えない鎖 part Ⅲ
唇の端に男の指が触れた
「痛…っ」
軽く触れただけで焼けるように痛い
「切れちゃったねぇ。…でも、誰が悪いのかなぁ?」
赤く染まった指を見せられて、さっき殴られた時にそこが切れた事にやっと気が付いた
「ごめんなさい…っ」
「誰が悪いか聞いてるんだけど」
顎を掴む指に力が入る
骨が軋むみたいで、痛い
このまま掴まれてたらきっと砕けちゃう
「僕、です…」
ニヤリ、と男が笑った
知らず、視界が揺れる
怖くて怖くて、また泣いてるらしい
泣いたら、この人は喜ぶだけなのに
もっと俺を泣かせようとするのが分かってるのに
「決めた。かずなり、逃がしてやるよ」
「え…」
だけど男から発せられた言葉は意外なもので
それでなくても1回じゃ何に対しても理解出来ない俺にはやっぱり言ってる意味が分からない
「その代わり、俺が決めた場所に放置するから。3日、経ったら見に行く」
「あの……」
何を言っているんだろう
この人の言ってる言葉の意味が、どうしても理解出来ない
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