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それは本当に偶然だった

たまたま1人で見に行った映画館で
たまたま隣に座ったのが彼で

映画に夢中になってしまった俺が
間違えて彼の持つポップコーンに手を伸ばしてしまったんだ


「ちょっと…」
俺を咎める囁き声

それでも最初は分からなくて
構わずまた手を伸ばそうとしちゃって


二度三度と繰り返すうちに、その人は諦めたのか何も言わなくなって


…すっかり忘れてたんだ、一人で来てた事を




本当は恋人と見に来るつもりだった

だけどつい二日前、その恋人に振られてしまって
この映画も一緒に行く約束をしてて

迷ったけど、これはどうしても見たい映画だったから、気分転換も兼ねて一人で来たんだ



エンドロールになって

「俺のポップコーン……」
なんてちょっと悲しげな声が耳に入った時


ここでようやく俺は自分がやらかした事に気が付いた








「ご…ごめんなさい！！」

薄暗い館内から明るいロビーに出た瞬間、俺は彼に頭を下げた