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今宵もネムリヒメに素敵な夢を...♡

第6章 風邪なんてオレにうつしてさっさと治しちまえよ♡ver.渚






──渚先生…

アタシはもう、手の打ちようがない貴方の重篤患者のようです。


……………

…………

………

……





「なぁ、千隼…」

「…うん?」

「最後のオレの言うことひとつだけきいて?」


それからしばらくして、渚くんの腕のなかで絶対安静。ピッタリと自ら収まるアタシに、なぜか命令口調ではない彼が瞼の上に静かに唇を落としてきた。


"言うこときくって言ったよな…"

"これ命令な…"


そんなドS発言はどこにいったやら、耳に残されるのは優しい声色に混じった艶のある切なげな余韻だけ。


「渚くん?」


あ………


だけど、それを不思議に思って彼を真っ直ぐ見上げれば、すぐにアタシは深い色で揺れる漆黒に囚われるかのようにその瞳の住人へと化していた。


「腹立つからオレだけにして…」

「っ………」


唇の上を長い指先が言葉の尾を引くように滑って…


「オレだけでいいんだよ…お前が風邪をうつすのは。だから…」


もうすぐ夜の帳が舞い降りるオレンジよりも群青が色濃く混ざる夕刻。どこか寂し気な静寂に聞こえるのはそんな囁きと重なるふたつの鼓動だけで…


  




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