
出逢いは最悪だったけれど。
第1章 それはもう10年前の出来事
夢を見た。
とても懐かしい夢を。
そっと目を開け、
顔を横に向けると、
すやすやと気持ちよさそうに眠る彼がいた。
頬に青い絵の具がついている。
あれだけ早く寝ろと言ったのに、
また夜遅くまで絵を描いていたのだろう。
彼はひとつのことに没頭すると、
何時間も
何十時間も
夢中になって、止まらなくなる。
出逢った当時の、
無気力な彼がとても懐かしい。
あの時、
心配して屋上に行った俺を
いきなり襲ってきたりして。
衝撃的だったなー。
まさか男に組み敷かれるとは思わなかったし。
出逢いは最悪だったかも。
閉じた瞳の奥で、
10年前の記憶が蘇ってきた。
