泣かぬ鼠が身を焦がす
第36章 一生添うとは
ひと通り俺の目元を拭き終えた拓真さんは、着てた上着のポケットから紙を取り出す
「?」
明らかに仕事で使ったり役場に提出したりする類に見えるその紙の上部には「養子縁組届」の文字
誰かと養子縁組すんの?
とか呑気に思っていると、拓真さんが説明してくれた
「純には説明していなかったんだが、実はまだ純は間宮のままなんだ」
「それ、って……」
まさか
「あぁ。まだ俺との養子縁組はされてない」
「そう……だったんだ……? 俺、あの後拓真さんが俺の戸籍? を拓真さんのところに入れてくれたんだと思ってた……」
俺が正直にそう言うと拓真さんは「黙っていて悪かった」と謝罪の言葉を口にした
まぁ、よく考えれば当の本人の俺が何のサインもしてないのに養子縁組なんて成立するわけないか
俺の考えが浅かっただけじゃん
にしても
「なんで今そんな書類持ってるの?」
俺の質問に拓真さんが待ってましたと言わんばかりに微笑む
「純、結婚って戸籍上どうなることかわかるか?」
「結婚? え、えーー……と……戸籍が一緒になる……?」
え、なにこれ
あってる?
俺のぼんやりした答えにも、拓真さんは正解だと言ってるように微笑んでくれる
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