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泣かぬ鼠が身を焦がす

第30章 歩く足には


俺が間抜けな感想を抱いていると、外で傍観していた茜さんが頬を膨らませていた


「……」
「どうしたの、茜さん?」


茜さんは拗ねたみたいな感じで俺を見て


「ノラ……純、って名前なの?」


と聞いてきた


「そうだけど……」
「……私だけ、知らなかった……」


ショックを受けた顔をしている茜さんが、なんだか小動物みたいで可愛い

俺は笑いながら茜さんに近づいて


「改めまして、間宮純です。名前を言えなかったのには、事情があったんだ。ごめんなさい」


と素直に謝った

すると茜さんは俺を見て目を潤ませる


「!」


え、えぇ……
なんかしたかな、俺

いやしたか
名前黙ってたのそんなにショックだったかなぁ……


「ご、ごめ……」


俺が謝ろうとしたら、茜さんがガバッと抱きついてきた


「!?」
「ごめんね、ノラ……辛いことがあったんだよね……私、何にも力になれなくて、ごめん……」
「!」


なんだよ、それ


俺の勝手な事情で拓真さんや伊藤さんや香織さんや茜さんや、たくさんの人に迷惑かけたのに

力になれなくてごめんなんて

謝るのは俺の方なのに

今まで何も話せなくてごめんって
何も言わない俺に優しくしてくれてありがとうって


やばい
まじで、涙出そう

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