
泣かぬ鼠が身を焦がす
第29章 黒白を
混乱はしたけど、その代わり俺の熱くなった頭は徐々に冷めて行った
「拓真さん……? たく……ん……ぅ」
小さい声で名前を呼ぶと、拓真さんは俺にキスをした
それはさっきの荒々しいキスじゃなくて、俺を包み込むような優しいキス
ねっとり舌を舐め上げられて、俺はうっとり目を細めた
ゆっくり拓真さんが俺から離れると、拓真さんの顔には柔らかい笑顔が浮かんでいる
「……」
なんで
「落ち着いたか?」
「ん、うん……」
「悪かった。乱暴して」
優しい喋り方に、さっきまでの嫌われたって不安がすっかりなくなった
俺は首をフルフルと横に振る
拓真さんが俺のこと嫌いになってないなら
どうでもいい
でも理由は聞きたい……かも
俺の視線に拓真さんは言いたい事を悟ってくれて、俺の額にキスを落としてから話してくれた
「思い出してたんだろ。家にいた時のこと」
「……うん……」
やっぱりお見通しか
「前に同じようなことがあったからわかったんだ」
昔のこと、夢に見てた時のことかな
確かに結構前に拓真さんとのセックスを拒んだことあった
「あの時は俺には何もできなかったからな……」
