泣かぬ鼠が身を焦がす
第28章 画竜点睛
あったかい腕の中で、俺の身体の痛みも同時に解れていくように感じた
多分本当に眠る間際で、意識が朦朧としてたからそう感じたんだと思うけど
拓真さんパワーだって信じた方が何かと都合がいいからそうすることにする
「純、眠れそうならこのまま眠ってもいいぞ」
言われなくてもそのつもりです、なんて言ったら拓真さんは笑うかな
「……ん……あり、がと……」
俺は小さく返事をして、細く開いていた目蓋を閉じた
服越しに感じる拓真さんの肌を触れているところ全部で感じる
心の底から幸福感に包まれて幸せ
俺は肺の中の空気をゆっくり出し切って、ゆっくりと吸った
鼓動が落ち着いて、呼吸も深くできるようになるともう眠るまでは一瞬で
俺は最後に
もしこれで目が覚めたら実はここまで全部夢で、まだ俺は家から出られてもいませんでしたー
なんて言ったら、俺は死んでもいい
それぐらい
何もかもどうでもよくなるぐらい幸せ
なんて考えて
ゆっくりと意識を手放した
心のどこかで恐れていたはずのあの人が出てくる夢、どころか他の夢もその時は見ることはなく
久しぶりに穏やかに、深い深い眠りへと落ちた
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