泣かぬ鼠が身を焦がす
第27章 苦あれば
失敗の気配が出てこようとしたのを無理やり封じ込めて、俺は痛んだところをもう痛まないようにと願いながら摩った
扉に耳を近づける
「……」
音はしない
誰もいなそうだな
部屋の壁にかかっている時計を確認して、普段ならこんな風に人が動いている時間だ、と頭の中で何日も集めてきた情報と照らし合わせた
俺は深呼吸をして
よし、行こう
部屋の窓を静かに開けた
俺の部屋、というかこの家は平屋なのにも関わらず少し地面から高いところに作られてる
窓を塞がれてないのは、こんな高さからまさか飛び降りたりしないだろうって思われてるから
でも、俺には突破口はここしかない
脚折れてでも、俺はここから出て行く
窓枠に腰掛けた俺の足の下には、たくさんの風が吹き抜けている
怖くない
わけない
怖い
怖いよ
でも
「行かなきゃ」
そして俺が窓枠に着いていた手で身体を外へ押し出そうとしたその時、部屋の扉が開いた
「!!!!!」
勢いよく振り返るとそこにあったのは
お手伝いさんの姿
「純さん……? なに、やって……」
「……っ」
俺は素早く部屋に戻って、お手伝いさんの口を手で塞いだ
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