
泣かぬ鼠が身を焦がす
第21章 能ある鷹も身を焦がす(サイドストーリー)
「いや、そりゃ……ゲイバーで知り合った人と一晩の関係ってのを持つことはあるけど、知り合ったばっかりの仕事相手に薬盛って、なんてことしないよ」
しましたけどね
という私の心の中のツッコミはさておき
「では、何故あのようなことを私にされたのですか」
「……」
三村様がまた俯かれました
昨日はもっと自信がある方のように見えましたが、今日は随分としおらしいですね
答えを待つ間に私も1口食後酒を飲みます
すると、勢いよく三村様が顔を上げられました
その顔には何か決意をしたような色が滲んでいます
「俺、実は伊藤さんに一目惚れしたんだ!」
「……はい?」
予想外です
「でも、俺本当にあんなことする気なくて……っ」
少し前のめりになりつつ私に必死で伝えようとする三村様ですが、私の頭は上手く回りません
「伊藤さん、俺と付き合ってくれない?」
えぇと
そうですね
なんというか、既視感のある状況にどうしたらいいのか
この少しヤケクソのように言ってしまうところも
してしまったことの内容も
もしかしてノラ様も同じような気持ちだったのでしょうか
それは、困らせるはずですよね
