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泣かぬ鼠が身を焦がす

第18章 遠くなれば薄くなる?


しかし仕事中も純のことが頭から離れず、イライラする


「社長、お時間です」
「あぁ」


こんな時に人と話す気になんてなれないというのが本音ではあるが、立場上会議や接待には出席しなければならない

今日もこれから会社を出て外の人間と会わなくてはならず、気が重くなった


「はぁ……」
「お疲れですか?」
「……いや」


俺に心配の目を向ける静に大丈夫だ、と告げて車に乗り込む

後部座席に1人で座り、気分転換にでもと外を眺めていると


「!!!」


偶然通りかかった駅で、純を見つけた

隣にはやたらと顔の整った男がいる


ヒトミさんと会うんだったよな……?
この距離で1度会ったヒトミさんを見間違えたりするわけない


嘘を吐かれていたという事実に胸が締めつけられた


丁度信号待ちで車が停車して、笑い合いながら歩く2人を暫く眺める事が出来た

仲の良さそうな2人に、今まで経験したことのないような痛みが身体中に走る


俺は落ち着け、と1度目を逸らして深く呼吸をした


信号が青になり、車が動き出す時に最後にもう1度純の方を見る


「!!!!」


すると、純は何やら男から封筒を受け取っていた

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