
泣かぬ鼠が身を焦がす
第10章 3日飼えば恩を忘れず
「すげー椅子ふかふか」
「最近の映画館は進歩してるんだな」
「おじさんくさ」
「おい」
他愛のない話に
くだらないボケ
普段も夜はたくさん話してると思うけど、今日はそれよりもっと話せてる気がする
「そんなに映画見たかったのか?」
「え? なんで」
「目キラキラしてるから」
「! うっせ」
「何故怒る」
急に変なこと言うなよ
もー
店員さんがポップコーンと飲み物を持ってくると、本当にすぐ映画が始まった
見たのは海外のスパイアクション映画
世界中で知らない人はいないってぐらい有名な俳優が、自分の婚約者を救うために奔走している
手に汗握るってこういうことかっていうぐらいの迫力に、自分でも驚くほど熱が入った
「面白かった!!!」
「面白かったな」
杉田さんも楽しめたみたいで、興奮気味だ
劇場を出ると腕時計を見て「もうこんな時間か」と呟く
昼前ぐらいに入ったんだけど、映画が結構長かったらしくて時間はもう夕方
「よし、飯行こうか」
「うん。どこ行くの?」
「予約してある店に行く」
「中途半端な時間だけど、大丈夫?」
「時間は適当に行くと言ってあるんだ。行くぞ」
