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泣かぬ鼠が身を焦がす

第10章 3日飼えば恩を忘れず


うわ、もー
舌回んない

最悪……っ


恥ずかしくて膝の上に置いていた自分の手に視線を落とすと、杉田さんが横でふ、と笑った


「俺が一般人と一緒に見るわけないだろう」


そんなん知るか
つか、俺がって言うけど杉田さん普通にそういうの気にしなさそうだし


「どーすんの?」
「行けばわかるよ」


余裕な雰囲気の杉田さんをチラッと見ると、俺のたどたどしい話し方なんて気にしてない様子で

ただ今日のデ……デート? を楽しんでるみたいだった


俺も
余計なこと考えないで楽しもう


「あとどれくらい?」
「10分くらいで着くだろ」
「ふーん。楽しみだなー……」


杉田さんがーとか
す、好きな人が、とか

考えるのやめた
こうやって連れ出してくれた杉田さんに失礼……だよね!!


「杉田さんは見たい映画なかったの?」
「俺はあの映画の監督が好きで、見たいと思ってたんだよ」
「気使ってるんじゃなくて?」
「なくて」


はっきりと言い切った杉田さんは嘘をついているようには見えない


嬉しい

嬉しい

それに、楽しい


「まだ?」
「もう少しだって。さっき10分って言っただろう」
「聞いてなかった」
「おい」

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