
泣かぬ鼠が身を焦がす
第8章 網の目にさえ
温度差に少しだけ心が痛い
杉田さんにも同じ気持ちを味わって欲しかった
なんて
「ご馳走様」
「ごちそーさま」
そーいえば、溜まるとか言ってたけど本当にそうなのか?
あのビジュアルなら、相手には困んないだろ
社員からの信頼も厚そうだし
ううむ
何考えてんだろ
杉田さんのことまだまだ知らないことだらけだなぁ
「ノラ、風呂」
「あーはいはい」
って今日も一緒に入んのかよ
心の中で文句を垂れつつも一緒に浴室へ
身体や頭を洗われて早々に湯船に入れられた俺の背中側に、さっさと全身洗い終えた杉田さんが入ってきた
2人して息を吐くと
「今日は1日何をしてたんだ?」
なんて質問が飛んでくる
「んー、テレビ見てた」
「ずっと?」
「うん。他にやることもなかったし」
「そうか」といつも通りの返事が返ってきたところで、後ろから髪の毛を掬われる
「髪、邪魔じゃないのか?」
「前も聞いてきたよね。慣れてるってば」
この方が好都合なことがあるんだよ
「目悪くなるぞ」
「それならもうとっくになってるハズだろ。全然大丈夫だもん」
何でかずっと俺の濡れた髪を後ろから弄る杉田さんが、肩につくほど伸びた髪をひとまとめにしてきた
