
不透明な男
第3章 自覚の無い男
あ、そうだ、そうじゃなくて。と本来の質問を投げ掛ける。
智「おれの家どこか知ってる?」
兄「知らない。」
智「…ほんと、なんも知らねぇのな。」
兄「お前のせいだ。」
智「はい、すいません…」
退院したら何処に行けばいいんだと悩む俺に兄ぃが言う。
兄「俺の家に来ればいい。」
智「やだよ…。」
兄「なんで。」
智「なんかヘンな事すんでしょ。」
大丈夫だよと兄ぃが笑う。
兄「俺、しばらく出張に行くんだよ。」
智「出張?」
兄「結構忙しくてな。長期になるかも知れないんだ。」
智「どんくらい?」
兄「うーん、2、3ヶ月?早くて1ヶ月位か。」
結構長いんだねと呟く俺に、寂しいか?と兄ぃが聞く。
智「べつに」
勝手に尖る俺の口が言う。
兄「素直じゃないねぇ。ま、そんな所が堪んねぇんだけどな。」
兄ぃは、笑いながら少し寂しそうな顔をする。
兄「はぁ。心配だ…。」
智「大丈夫だよ。生活の知恵は忘れてない。」
兄「や、そういう事じゃなくて」
智「なに?」
兄「色々とだよ…。」
キョトンとする俺に、兄ぃは困ったような顔をしながら呟いた。
